プラネタリウムにいつもいたあの人と,あるときエレベーターで2人きりになった。僕は妙に緊張してしまっていたら,その人はふと当然のように話しかけてきた。「いつもいらっしゃいますね? うれしいなぁ。僕はプラネタリウムで以前みかけた人にもう一度会うと,嬉しくなるんですよ。…」。
渋谷の天文博物館五島プラネタリウムが3月11日に閉館するが,この最終日の投影がインターネットでライブ中継される。44年の歴史に幕を閉じる11日,午後1時から7時まで中継され,館長へのインタビューも放送される。
日本でもっとも雑然とし,騒がしい街の真ん中にあるプラネタリウムは,いつも静かで,人も少なかった。平日など片手で数えられる程度の人しかいなくて,逆にその雰囲気が好きで,足を向けていた。ふと,いつも同じ席に同じ人が座っていることに気付いた。もちろん,投影中は暗いので顔まではうかがえないが,その円筒形の不思議なカタチをした帽子は,すぐに目に留まった。見上げると,天井では超新星の話が続いていた。星の終わり,その時に発せられる光と,粒子と,エネルギー。星の死の時なのに,その光で初めて発見される星もあり,新星,と云われる。
ネットワークとは,知識でも,代替の場でもなく,,,世界であり,実態となる。ネットワークにたゆたいながら,人は深海を感じ,極寒の地を感じ,愛欲を感じ,星空の中心にいることも感じられるようになる。プラネタリウムは天井に投影されるが,ネットワークの星空は,心にダイレクトに投影される。星空は,頭上にあるのではなく,胸の内にあるのだということを,その時,実感できるだろう。そう,そういえば,あの人は続けてこう云っていた。「…なんで,嬉しいかって? 星空の中に,ぽつんと1人でいることを考えたら,あまりの孤独で死んでしまいますからね。繋がっている誰かがいたほうがいい。その繋がりの中にこそ,星空はあるんですよ。そうは,思いませんか?」。
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